Looking Back with Music

収録曲
1. It's in Her Kiss
2. Glad All Over
3. Sea of Heartbreak
4. Livin' Lovin' Wreck
5. Where Have You been
6. Shimmy Shimmy
7. Needles and Pins
8. This Empty Place
9. Gonna Send You Back to Georgia
10. I Count the Tears
11. Hi-Heel Sneakers
12. Can't Help Forgiving You
13. Sho' Know a Lot about Love
14. Don't Throw Your Love Away

　1960年代前半イギリスのバンドの曲がアメリカのヒットチャートで猛威を振るった、 いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョン、 その中でもザ・ビートルズ を代表とするリヴァプール出身のバンドのヒット曲は世界的にはマージー・ビート、 日本ではリヴァプール・サウンドと呼ばれました。
　今回紹介する「イッツ・ザ・サーチャーズ」はイギリスにおいてはビートルズに匹敵するマージー・ビートの 代表格ザ・サーチャーズの２曲の全英チャート１位曲を含む本国イギリスでのサード・アルバムです。
　一般的にフォーク・ロックというとザ・バーズ が有名なようにアメリカから発生したと言われていますが １２弦ギターを使用したサウンドからザ・サーチャーズが実質なフォーク・ロックの元祖だと言う見方もあります。
　そんな極上のフォーク・ロック・サウンドを満喫できる、このアルバムは個人的に大好きな1枚です。
　１曲目、オリジナル・タイトルは「The Shoop Shoop Song (It's in His Kiss) 」。 タイトルからわかるように女性Ｒ＆Ｂ歌手であるベティ･エヴェレットが最初にヒットさせた曲です。 サーチャーズ・ヴァージョンはビートルズでもおなじみの「ツイスト・アンド・シャウト(Twist and Shout) 」にちょっと似た仕上がりになっています。
　２曲目は、ロックン・ロールの名曲「ブルー・スエード・シューズ(Blue Suede Shoes) 」が有名な カール・パーキンス の曲です。
　３曲目、オリジナル はドン・ギブソン で、1982年にはアメリカのカントリー・ロック・バンド＝ ポコ もカントリー・チャートでスマッシュ・ヒット させています。
　５曲目は、ロックン・ロール黎明期のロカビリー歌手ハードロック・ガンターが自作自演した曲 です。
　７曲目は、ジャッキー・デシャノン のカバーでサーチャーズ・ヴァージョンが全英１位を記録した傑作曲です。 この曲でのリード・ヴォーカル交代がトニー・ジャクソンのバンドを辞めるきっかけになったとも言われています。
　８曲目は、バカラック＝デヴィッドの作品で ディオンヌ・ワーウィック がオリジナル 。
　９曲目は、Ｒ＆Ｂ歌手ティミー・ショー唯一の全米チャートランクイン曲 のカバー。
　１０曲目、ドリフターズ のヒット曲のカバーで、 ザ・ロークスの「今日を生きよう」(Let's Live for Today)の元ネタとしても紹介済み です。 １９９５年のアルバム『ナイト・イズ・ゴーン〜ドク・ポーマス・トリビュート 』収録のロザンヌ・キャッシュ ・ヴァージョンも好きです。
　ラスト１４曲目は、このアルバムからの２曲めの全英１位ヒットになった曲で オーロンズがオリジナル 。
　と、ここまで書いてきたことからわかるように、アルバム全曲が
Ｒ＆Ｂ、ロックンロール、カントリーのカバー曲で構成されています。
　これこそがヒット曲の殆どが既存曲のカバーだというサーチャーズの特徴です。
　先に書いたようにこのアルバムはデビュー時から主にリード・ヴォーカルを担当していた ベースのトニー・ジャクソンが参加した最後のオリジナル・アルバムになってしまいました。
　この後発売した12弦ギターが印象的な傑作「 ウォーク・イン・ザ・ルーム(When You Walk in the Room) 」もジャッキー・デシャノン のカバーで全英全米でヒットしています。
　さらに翌１９６５年にはアメリカで既発売だった ザ・クローバーズ のカバー「ラブ・ポーションNo.9(Love Potion No. 9) 」が突如全米３位まで上がり大ブレイクとなります。
　カバー曲でもオリジナルかと思うような名演でヒットさせてしまうのがサーチャーズの魅力であり裏を返せばオリジナルで勝負できなかった弱点でもあります。
　この弱点が原因なのかわかりませんが全盛期は３年ぐらいと長続きしませんでした。(May 6, 2017)